北九州市ワーク・ライフ・バランスレポート

子育て支援や男女がともに働きやすい職場環境づくりに取り組む企業等の取り組みをご紹介します。

医療法人寿芳会 芳野病院

院長 芳野 元(はじめ) 氏

医療法人寿芳会 芳野病院
院長 芳野 元(はじめ) 氏

子どもの情緒が安定する効果も仕事と生活の好バランスでいきいき

ワーク・ライフ・バランスの考え方を積極的に取り入れて成果を上げている若松区の芳野病院。女性職員の育児休業取得率を70%以上の維持と男性育児休業の促進、常勤短時間勤務制度による小学2年生前までの子どもをもつ職員の仕事と家庭の両立などを宣言しています。

人材はうちでは『人財』

大正2年設立の芳野病院は職員数262人の中規模病院ですが、平成19年、北九州市では初めて、また職員数300人以下の福岡県内企業では初めて国の「次世代育成支援行動計画」の基準適合一般事業主認定を受けています。これは雇用者が仕事と子育てを両立させるために策定した計画書にもとづき、しっかり取り組んでいることの国による証です。

「当院の子育て支援の取り組みは比較的早く、平成16年のことでした。院内のクラブ活動の代表者会議で出た“女性が結婚・出産しても長く勤められる環境とは”という話題から発展し、県が推奨する『子育て応援宣言』に県内で18番目に登録することにしたのです」その背景には芳野元院長のアメリカ留学中の体験もあります。

25年前、ニューヨーク州立大学で生理学の勉強をしていた芳野院長は、指導教授が毎日午後4時に必ず帰る姿を見て理由を尋ねたそうです。すると「子どもを保育所に迎えに行くから」との答え。これには本当に驚いたという芳野院長。ほかの研究者や職員も5時には仕事を切り上げ、5時以降はプライベートの時間を楽しんでいたといいます。ワークとライフのバランスが見事に取れたライフスタイルをすでに目の当たりにしていたのです。「お父さんがお迎えとは驚きましたが、日本にもこういう時代が来ると確信しました。だから『子育て応援宣言』には躊躇しませんでしたね」

平成17年4月には「次世代育成支援行動計画」を策定。育児休業取得率の向上を図り、女性職員では取得率を70%以上に、男性では1人以上に目標を掲げました。
同年8月には「常勤短時間勤務制度」を導入。11月には「ノー残業デー」を設定し、翌18年には「連続休暇取得奨励規定制度」を立ち上げています。
こうしたスピーディーな施行には驚きますが、「トップダウンで素早く規則を決められるのは中規模事業所のいい点。ただ、一方的にならないよう職員にアンケートを取って意見はすくいあげています」と芳野院長。

働く側にとってはいいことばかりですが、病院側にメリットはあるのでしょうか?

「人材はうちでは『人財』。せっかく仕事を覚えてもらった人に結婚や出産で辞められたらどれだけの損失になるでしょう。優秀な人材の新規獲得にもつながります」短時間勤務を利用している職員から、保育所に余裕を持って迎えに行けるようになり、いつ迎えに来てくれるかわからず情緒不安定気味だった子どもに笑顔が戻ったといううれしい声も寄せられています。
こんな声がもっと増えれば、働く方も雇う方もいきいき。働く環境の満足度が上がれば仕事へのモチベーションもアップし、病院の評判も高まります。

ところでこれからの取り組みを教えてください。

    今年度は、
  1. 子ども参観日
    自分の働く姿を子どもに見せ、仕事への理解を深めてもらいます。
  2. Y’sカレッジ
    職員の自分磨きのために院内で行うセミナーに取り組みます。
「ワーク」に加え、「ライフ」の充実も推進していくという芳野病院。
笑顔の花が院内にますます増えそうですね。

実例のご紹介

総務課 小川美里さん

ワーク・ライフ・バランス担当
総務課 小川美里さん

「子ども参観日」や「Y’sカレッジ」を企画

職員の子どもに自らの働く姿を見てもらい、仕事への理解を深めて欲しいとの願いから「子ども参観日」を企画中です。休日の出勤や夜勤を含め、子どもたちには出勤後の姿が見えません。
そこで、お父さんやお母さんがどんな仕事をしているかを実際に見てもらうことで、家族の絆も強まるのではと考えました。「Y’sカレッジ」は病院内で自分磨きの場を提供しライフの充実を目標に企画しました。従来、ソフトボールやゴルフ、フラワーアレンジメントなどのクラブ活動があるのですが、それとは別にネイリスト、ファイナンシャルプランナー、日本茶ソムリエなど各方面のプロによる多彩なセミナーを考えています。

黒田 俊江さん(長女3歳9か月 長男1歳4か月)

[事務課]
黒田 俊江さん(長女3歳9か月 長男1歳4か月)

わたしの職場では出産後、退職する人が多かったんです。だから、産休や育休を取るのに不安や抵抗がありましたが、出産後も働き続けたいという思いと職場が後押ししてくれたことで思い切ることができました。休暇中、育休手続きで病院に行く機会を作ってもらったことで孤立感も感じずにすみました。職場の仲間と交わるなかで戻る場所があるという安心感が得られたことは、自分の中でとても大きかったですね。

吉田清香さん(長女1歳4か月)

[リハビリテーション部] 理学療法科
吉田清香さん(長女1歳4か月)

職場はひとりの患者さんを専任で担当するシステム。だから妊娠した時、まわりに迷惑がかかると思って仕事を続けていたら流産しかけ、職場のみんなから怒られました。産休中は同僚が遊びに来てくれたり、病院からメッセージが定期的に届いたり。復帰後もみんなが手助けしてくれて。そんな働きやすい病院だとわかっていたので「寿退職」したくなく、大分県で働いていた主人が北九州市へ転職してくれました。これからもずっとここで働きたいですね。

会社概要

医療法人寿芳会 芳野病院
医療法人寿芳会 芳野病院

代表:芳野 元
業種:医業
所在:北九州市若松区本町2丁目15-6
職員数:法人全体262人(うち女性194人)
    病院のみ240人(うち女性175人)
    ※2010年2月1日現在
URL:http://www.yoshino-hp.com/

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